ご挨拶
(東京大学医学部附属病院 小児・新生児集中治療部 教授)
このたび、第58回日本周産期・新生児医学会学術集会を2022年(令和4年)7月10日(日曜日)~12日(火曜日)の3日間、パシフィコ横浜ノース(横浜市)で開催する運びとなりました。日本周産期・新生児医学会の前身の日本新生児学会の第1回学術集会は1965年7月に東京大学小児科の高津忠夫教授が会長として主催しており、今回は57年ぶり2回目の東京大学小児科の主催となります。
本学術集会のテーマは「大容量情報時代の世界といのち」としました。ヒトの遺伝情報はDNA上に記録され、体内の生物的活動は全て情報により制御されています。医学はbioinformaticsの導入により複雑な病態を明らかにし、医療は分子レベルでその情報制御を応用し成果をあげつつあります。一方、人は半導体、コンピューター、インターネットを発明し、5Gという情報通信システムを発展させ、巨大な情報社会を構築しました。今後、さらにAIやロボット技術の導入などにより、世界はさらに大きな変革に向かうことになります。
しかし、この社会変革は、人類の繁栄と幸福に寄与するのでしょうか。多くの人は不信と不安の中にあり、必ずしも幸せではないのではないでしょうか。一方、巨大な「情報」は自分を超えたはるか遠いところの話のようですが、実は私たちはプログラムされた情報により生まれ、与えられた情報処理能力により日々驚きと喜びを持って暮らしているはずです。
私たちの学会はいのちとヒトの社会に深く関わり、母子と国民の福祉と医療の発展を目指す学会です。そこで、この学術集会では、「持続可能な世界の探究」と「いのちへの感謝の再認識」をサブテーマとして、希望ある次世代の周産期を皆さんと一緒に考えたいと思っています。特別講演として周産期の範囲を超え、一流の方々の講演に耳を傾ける機会を準備いたします。そのほかにも、最先端の研究と医療についても多く学ぶ機会を持ちたいと思います。また、ここ数年、私が取り組んできている新生児生命倫理研究会からも情報提供をしたいと考えています。
今回の学術集会ではパシフィコ横浜ノースという大きな新しい会場を確保できました。COVID-19がその時にどのようになっているか、まだ全く読めませんが、現時点では、現地開催とオンデマンドの後日配信の両方を考えており、何より多くの方が期待している現地での活発な討論を実現したいと思っています。会場に来られる方にも、また後日の配信を楽しみにしている方にもご満足いただける学術集会にしたいと思います。全国からの多くの皆様方のご参加を心からお待ち申し上げます。